『さあ帰ろう、ペダルをこいで』 シネマート心斎橋

●スタッフ
監督 ステファン・コマンダレフ
脚本 ステファン・コマンダレフ
イリヤ・トロヤノフ
デュシャン・ミリチ
ユーリ・ダッチェフ
原作 イリヤ・トロヤノフ
●キャスト
ミキ・マノイロヴィッチ (Bai Dan)
カルロ・リューベック (Aleksander 'Sashko' Georgiev)
フリスト・ムタフチェフ (Vasil 'Vasko' Georgiev)
アナ・パパドプル (Yana Georgieva)

ドルカ・グリルシュ (Maria)

交通事故で記憶を無くした30代の男性アレックスが、祖父と自転車で旅をしながら記憶を取り戻していく姿を描いた本作。アレックスの人生を通し、1980年代の東欧で圧政に苦しめられていた人々の苦悩も描き出している。祖父とアレックスを結びつけているのは、ボードゲームバックギャモンだ。天から与えられる“運”と、自らの手で切り拓く“人生”を象徴するこのゲームを通し、祖父は無言で人生への対処法を教えていく。時代の流れの中で様々な苦難にあいつつも、揺るがないバイ・ダンの姿は、まさに人生のマエストロと呼ぶにふさわしい、理想の祖父像と言えるだろう。バイ・ダンを演じるのは、クストリッツァ作品の常連俳優のミキ・マイノロヴィッチ。
●解説
国家の歴史に翻弄され離ればなれに暮らしていた祖父と孫が、ドイツから故郷ブルガリアへとタンデム自転車で旅をするロードムービー。監督は、ブルガリアの新鋭ステファン・コマンダレフ。出演は「アンダーグラウンド」のミキ・マノイロヴィッチ、『ガーディアン -ハンニバル戦記-』のフリスト・ムタフチェフ、『アメリカへの手紙』のアナ・パパドプル。
●あらすじ
1983年、共産党政権下のブルガリア。アレックス少年の住むのどかで小さな田舎町にも不穏な影が忍び寄ってくる。町でいちばんバックギャモンが上手なアレックスの祖父バイ・ダン(ミキ・マノイロヴィッチ)を、民兵がじっと見張っていた。その民兵は、アレックスの父・ヴァスコ(フリスト・ムタフチェフ)が勤める工場の上司でもあり、バイ・ダンを見張ることと、その動向と発言を逐一密告することをヴァスコに命じる。だがどうしてもその命令を受け入れることが出来ないヴァスコは、妻ヤナ(アナ・パパドプル)とアレックスを連れて、ドイツへ亡命する決意をする。25年後のドイツ。久しぶりにブルガリアへと里帰りする途中、アレックス一家は交通事故に遭ってしまう。アレックス(カルロ・リューベック)が意識を取り戻したとき、彼は病院のベッドにいた。両親はその事故で命を落とし、アレックスは記憶を失う。そんな孫を心配して、ブルガリアから祖父バイ・ダンがドイツへやって来るが、アレックスは彼のことも覚えていなかった。アレックスが一人暮らしをしていたアパートに忍び込んだバイ・ダンは、アレックスが電気製品の説明書の翻訳の仕事をしていることや、親しい友人やガールフレンドもおらず引きこもりに近い生活をしていることを知る。バイ・ダンは、連日病院に来てアレックスを見舞いながら、幼い頃教えたバックギャモンを再びアレックスに教える。そんなある日、快復の兆しがみえたアレックスを、バイ・ダンは無理やり退院させ、タンデム自転車に乗って故郷ブルガリアに向かう旅へと誘う。ヨーロッパ大陸を横断しながら、バックギャモンに興じるふたり。やがてシンプルかつ非常に複雑なこのゲームが、アレックスに自分自身を取り戻させ、彼のそれまでの人生を知る鍵となる。人生とは天から与えられる「運」によるところもありながら、あくまでサイコロを振るのは自分であり、人生を切り拓いてゆくのもまた自分自身なのだと。そして旅の途中、とある施設に立ち寄ったアレックスは、そこですべての記憶を取り戻す……。
052★★★★