『オレンジと太陽』 梅田ガーデンシネマ

●スタッフ
監督 ジム・ローチ
脚本 ロナ・マンロ
原作 マーガレット・ハンフリーズ
撮影 デンソン・ベイカ
美術 メリンダ・ドーリング
音楽 リサ・ジェラルド
編集 ダニー・クーパー
●キャスト
エミリー・ワトソン (Margaret Humphreys)

デヴィッド・ウェンハム (Len)
ヒューゴ・ウィーヴィング (Jack)
リチャード・ディレーン (Merv)
ロレイン・アッシュボーン (Nicky)
イギリスの名匠ケン・ローチを父に持つジム・ローチの長編初監督作である本作は、イギリスで1970年まで行われていた「児童移民」の実態を明らかにした女性活動家、マーガレット・ハンフリーズの実話を基にした物語だ。親から引き離された施設の子どもたちを強制的に移住させ、過酷な環境で労働させるという実態の「児童移民」。マーガレットは、事実を隠そうとする組織の圧力に負けずに、イギリスにいる子どもたちの親を探し出すために奔走する。演じる実力派女優エミリー・ワトソンの真摯な姿が、観る者の胸を深く打つ。埋もれた歴史に光を当て、優しい眼差しで傷ついた人々を見つめるジム・ローチ監督。その姿勢は偉大な父と似ている。
●解説
英国最大のスキャンダルともいわれる“児童移民”の事実を明らかにしたイギリスのソーシャルワーカー、マーガレット・ハンフリーズの物語。監督は、ケン・ローチ監督を父に持ち、本作が長編映画デビューとなるジム・ローチ。出演は「脳内ニューヨーク」のエミリー・ワトソン、「パブリック・エネミーズ」のデイヴィッド・ウェンハム、「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」のヒューゴ・ウィーヴィング
●あらすじ
イギリス、ノッティンガム。1986年。ソーシャルワーカーのマーガレット・ハンフリーズ(エミリー・ワトソン)は、ある夜、見も知らぬ女性シャーロットから「自分が誰なのかを知りたい」と訴えられる。シャーロットはノッティンガム児童養護施設にいた4歳の時に、数百人の子どもたちと一緒に船に乗せられ、オーストラリアに送られたという。最初はその話を信じられなかったマーガレットだが、さらに別の女性ニッキーからも興味深い話を聞く。数年前届いた“多分、僕はあなたの弟です”と伝える手紙。彼女の弟ジャック(ヒューゴ・ウィーヴィング)も、シャーロットと同じようにオーストラリアへ連れて行かれ、姉の居所をようやく探し出して手紙を送ってきたのだ。それをきっかけにマーガレットは調査を開始。すると、死んだと聞かされていたシャーロットの母がまだ生きている事実を発見。しかも、シャーロットの母は、娘はイギリスの養父母にもらわれたと信じていて、オーストラリアに送られたことなどまったく知らなかった。ジャックに会いにオーストラリアへ向かったマーガレットは、そこにジャックやシャーロットと同じ境遇の人たちが大勢いることを知る。彼らはオーストラリアに到着すると、過酷な環境で働かされたり、虐待されたり、苦しい人生を歩んでいて、自分が誰なのか、母親がまだ生きているのかを知りたがった。マーガレットは、イギリスとオーストラリアを往復し、彼らの家族を捜し出す活動を始める。オーストラリア。マーガレットのもとには、沢山の人が相談に訪れ、長蛇の列ができた。最初の相談者に付き添って来た男性レン(デイヴィッド・ウェンハム)は、「あんたに何ができる」とマーガレットに突っかかるが、実は彼も児童移民で心の底では母親を見つけたがっていた。やがて、マーガレットの活動はマスコミの注目を集めはじめ、イギリスが子供たちを植民地に送った<児童移民>が、政府の政策によって行われていた事も明らかになる。そして彼女の調査は、しだいに政府レベルの大きな組織をも揺らし始めていった……。
051★★★☆