『別離』 梅田ガーデンシネマ

●スタッフ
監督 アスガー・ファルハディ
脚本 アスガー・ファルハディ
製作 アスガー・ファルハディ
撮影監督 マームード・カラリ
編集 ハイェデェ・サフィヤリ
字幕 柴田香代子
字幕監修 ショーレ・ゴルパリアン
●キャスト
レイラ・ハタミ (Simin)

ペイマン・モアディ (Nader)
シャハブ・ホセイニ (Hodjat)
サレー・バヤト (Razieh)
サリナ・ファルハディ (Termeh)
ババク・カリミ (Somayeh)
第84回アカデミー賞外国語映画賞、第61回ベルリン国際映画祭金熊賞など世界中の映画祭を席巻した話題作。前作『彼女が消えた浜辺』が日本でも公開されているイラン映画界の新鋭アスガー・ファハルディ監督が、きめ細かな脚本と巧みな演出で、テヘランに住む2つの家族の心の闇と、人間心理の複雑さ、深遠さを掘り下げる。いくつもの複線を張り巡らせた緊張感あふれるストーリー展開で、観客はいつしか一瞬たりとも画面から目を離せなくなるくらい虜になる事必至だ。濃密な人間ドラマの中に、夫婦間の倫理的問題、格差社会の現実、介護の在り方、信仰や信条など、イランの今を浮き彫りにしているところも興味深い。
●解説
イランの社会情勢を背景に、一組の夫婦とそこに関わる別の家族、それぞれの抱える秘密や嘘が絡み合い、人生を翻弄してゆく様をミステリータッチで描く。出演は「彼女が消えた浜辺」のペイマン・モアディ、「フライト・パニック 〜ペルシア湾上空強行脱出〜」のレイラ・ハタミアカデミー賞外国語映画賞ほか、多数の映画賞を受賞。
●あらすじ
ナデル(ペイマン・モアディ)とシミン(レイラ・ハタミ)は結婚14年の夫婦。間もなく11歳になる娘テルメー(サリナ・ファルハディ)とナデルの父の4人で、テヘランのアパートで暮らしている。娘の将来を案じたシミンは国外移住を計画し、1年半かけて許可を得たものの、ナデルの父がアルツハイマー病を患ったことが誤算となる。介護の必要な父を残して国を出ることはできないと主張するナデルと、たとえ離婚してでも国外移住を希望するシミンは対立。話し合いは裁判所に持ち込まれるが、離婚は認めても娘の国外移住は認めないと、ナデルが譲らなかったため、協議は物別れに。これを機にシミンは、しばらく実家で過ごすこととなる。そこで、家の掃除と父の介護のために、ラジエー(サレー・バヤト)という女性を雇うナデル。しかし、男性の体に触れることは罪ではないかと心配する敬虔なイスラム教信者のラジエーは、ナデルの父が失禁する場面を目にして激しく動揺。また別の日には、彼女が目を離した隙に、父がふらふら出て行ってしまうことも。そんなある日、ナデルとテルメーが帰宅するとラジエーの姿はなく、ベッドに手を縛りつけられた父が倒れ、気絶しているところを発見。ラジエーはほどなくして戻ってくるが、頭に血が上ったナデルは事情も聞かず、彼女を手荒く追い出す。その晩、ラジエーが病院に入院したことを知ったナデルは、シミンと一緒に様子を見に行き、彼女が流産したことを聞かされる。これにより、ナデルは19週目の胎児を殺した“殺人罪”で告訴されてしまう。ナデルはラジエーの妊娠を知っていて突き飛ばしたのか……?だとしたら、それは流産するほど強かったのか……?一方、ナデルもラジエーが父に行った行為に関して彼女を告訴。裁判は次第に多くの人々を巻き込み、それぞれの思いが交錯、複雑に絡み合ってゆく……。運命に翻弄されてゆく2組の家族。彼らが辿り着いた結末とは……。
041★★★★☆