『アニマル・キングダム』 梅田ガーデンシネマ

●スタッフ
監督 デヴィッド・ミショッド
脚本 デヴィッド・ミショッド
製作総指揮 ベック・スミス
ビンセント・シーハン
製作 リズ・ワッツ
美術 ジョー・フォード
音楽 アンソニー・パートス
編集 ルーク・ドゥーラン
●キャスト(役名)
ベン・メンデルソン (Andrew 'Pope' Cody)
ジョエル・エジャートン (Barry 'Baz' Brown)
ガイ・ピアース (Sgt Nathan Leckie)
ルーク・フォード (Darren Cody)
ジャッキー・ウィーヴァー (Janine 'Smurf' Cody)
サリバン・ステイプルトン (Craig Cody)
ジェームズ・フレッシュヴィル (Joshua 'J' Cody)
映画は少年の目を通してこの犯罪者一家の姿を描いていくが、少年の内面はほとんど最後まで明かさない。これは意図的で、そんな家族でも依存するしかない少年の心境を観客にゆだねているのだ。それまで主体的に行動することがなかった少年なので、この家族と警察のどちら側につくかは、その無表情な顔からはなかなかわからないのだ。ある事件をきっかけにこの家族の非情さがより露わになるが、そこからそれまで目立たなかった祖母がクローズアップされてくる。この祖母の歪んだ愛情がこのような家族を生み出し、過去に少年の母親が出て行った原因なのだろう。もっとも人間くさいはずの“家族”を、「アニマル・キングダム=野生の王国」と表すほど、殺伐とした世界が広がっている。犯罪に対する冷ややかな視線が印象的な、クライム・ムービーだ。
●解説
実在した犯罪一家をモデルに、凶悪犯罪で生計を立てる親族に引き取られた少年の葛藤を描くクライム・ドラマ。「メタルヘッド」の脚本家、デヴィッド・ミショッドの長編初監督作。出演は「ハーモニー」のジャッキー・ウィーヴァー、「英国王のスピーチ」のガイ・ピアース、「ノウイング」のベン・メンデルソーン、「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」のルーク・フォード。
●あらすじ
オーストラリア・メルボルン。17歳の高校生ジョシュア(ジェームズ・フレッシュヴィル)は母ジュリアと二人で静かに暮らしていたが、ある日突然、ジュリアがヘロインの過剰摂取で死亡してしまう。ジョシュアは、ジュリアが長い間付き合いを避けていた祖母ジャニーン(ジャッキー・ウィーヴァー)に電話をかけ、すぐにジョシュアのもとに駆け付けたジャニーンは、すべてを処理して彼を自分の家に連れ帰る。ジャニーンにはジュリアの他に、アンドリュー(ベン・メンデルソーン)、クレイグ(サリヴァン・ステイプルトン)、ダレン(ルーク・フォード)という3人の息子がいた。彼らは皆家族思いで、一見、明るく温厚な人物に見えたが、全員が銀行強盗や麻薬の密売など、あらゆる凶悪犯罪に手を染め、その収入で生計を立てていた。ジャニーンも息子たちの犯罪を黙認し、事実上裏ですべてを仕切っていた。そして、アンドリューの昔からの強盗仲間で、冷静で頭脳明晰なバリー(ジョエル・エドガートン)が多くの犯罪を計画していた。ジョシュアの母は、そんな一族から距離を置くため、息子を連れて家を出たのだ。だが今や他に行くあてのないジョシュアには、その家で暮らしていくしか道は残されていない。当初、一家がジョシュアを直接犯罪に巻き込むことはなかったが、彼が犯罪にまったく無関係でいつづけることは不可能だった。一方、横行する凶悪犯罪に業を煮やした警察は、凄腕の巡査部長ネイサン・レッキー(ガイ・ピアース)率いる強盗特捜班を組織すると、一家で最も凶暴なアンドリューに目を付け、彼の逮捕のために執拗な捜査を開始。レッキーは、ジョシュアを犯罪者一家から救い出し、彼の証言でアンドリューたちを一網打尽にしようと画策するが、ジョシュアは口を割らない。だが一家はジョシュアが彼らを裏切って警察に寝返るのではないかと疑いはじめ、強力な圧力で口止めをするのだった。頼る者のいない孤独の中で、逃げ場を失ったジョシュアは今、自分自身が生き残るために、強くならなければならなかった……。
022★★★