『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』

原題:THERE WILL BE BLOOD

監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン

出演:ダニエル・デイ=ルイス/ポール・ダノ/ケヴィン・J・オコナー/キアラン・ハインズ/ディロン・フレイジャー

原作:アプトン・シンクレア"OIL!"(石油!)
製作:ジョアン・セラー/ポール・トーマス・アンダーソン/ダニエル・ルピ
撮影:ロバート・エルスウィッド、ASC
美術:ジャック・フィスク
音楽:ジョニー・グリーンウッドレディオヘッド
衣装:マーク・ブリッジス
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン

2007年/アメリカ/2時間38分/シネマスコープ/ドルビーSRD

あらすじ
一攫千金を夢見るダニエル・プレインヴューは、幼い1人息子を連れて石油の採掘を行っていた。ある青年から、「故郷の広大な土地に石油が眠っている」と聞いた彼は、パートーナーのフレッチャーと共に米西部の小さな町、リトル・ボストンに赴き、安い土地を買占め、油井を掘り当てる。しかし、油井やぐらが火事になり、幼い息子は聴力を失う。精神に混乱を来した息子を、プレインビューは彼方の土地へ追いやってしまう。

解説
ダニエル・デイ=ルイスにアカデミー主演男優賞にもたらした注目作。アメリカン・ドリームを我が物にした主人公の野心と欲望を描いた大河ドラマ。欲望にまみれ、人間不信の主人公には、血や心で繋がる人間よりも富と権力を選んだ。監督は、『ブギーナイツ』、『マグノリア』のポール・トーマス・アンダーソン。ロックな作品が多い監督だけあって、音楽が凄まじい力を持つ。特に油井の火災シーンは、登場人物の恐怖と絶望を音楽が代弁していると言ってよいかも。主人公の息子を演じたディロン・フレイジャーは、本作のためにキャスティング・ディレクターが“発掘”した新人。初めてとは思えない初々しい演技は、まさにダイヤの原石。



これもまた、見応えのある158分。

自分しか信じない主人公(とはいえ、なかなか人間的な魅力にあふれている)をダニエル・デイ=ルイスが大熱演。ハビエル・バルデムが主演男優賞にノミネートされなかった理由はこれじゃないかと邪推してしまいました。

教会の話がでてきたところで、これは「キリスト教対資本主義」みたいな展開になるのかなと思って構えたんですが、なんのなんの、この牧師がホントに胡散くさいヤツで(ポール・ダノなかなか好演)、教会のシーンではこの監督の悪意すら感じましたね。

あと、ジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)の音楽がこの映画にとってもよく合っていて、感心しました。

とはいうものの、エンドロールの最後の最後、「ロバート・アルトマンに捧げる」のひとことが一番グッときました。