『恋愛は小説か』 片岡義男 文藝春秋

ある日、ある時、あるところでふたりが出会うということ。
ここだけが恋愛小説なのかもしれない。
煌めく一瞬を切り取った7つの物語。
冬のある日の昼下がり、彼女と彼は出会い、関係は始まった――ありふれた街を背景に、洗練され成熟した人間模様が描き出される

短篇小説の名手・片岡さんが雑誌「文學界」に発表した連作6篇(「恋愛は小説か」「午後のコーヒーと会話」「すこし歩こう」「大根で仕上げる」「そうだ、それから、マヨネーズ」「割り勘で夏至の日」)と雑誌「In the City]に発表した「卵がふたつある」をまとめたのが本書です。
ありふれた町でごく普通の生活をする男と女を描いているのに、どこか洗練され成熟している。ある日突然出会った彼らが、つかの間の夢を見ているような、けれども確実に記憶に残るに違いない関係を築いていきます。
独特の世界観と研ぎ澄まされた言葉で読者を冒頭から引き込む片岡マジックは、本書でも健在です。往年のファンが、この連作は近年のちょっとしたニュース、と話題にする粒ぞろいの小説集です。
5月半ばには岩波書店から、小説を書くにいたるまでの、言葉をめぐる片岡さんの自伝的エッセイ『言葉を生きる』が刊行予定。今年の初夏は片岡義男さんから眼が離せません。
067★★★